フォトグラファー・シバノジョシアのブログ写真展。ICELANDのミュージシャン&音楽・レイキャヴィクの街・自然の写真を中心に、旅行・旅先でのスナップや日々のつれづれなどをアップしています。
7/15公開!映画『ハートストーン』と氷島LGBT事情&カントリーサイド

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★アイスランド映画『ハートストーン』今夏7/15〜公開!

ベネチア国際映画祭でクィア獅子賞(最優秀LGBT映画)受賞!北欧アイスランドを舞台に少年たちが恋と性に悩む青春映画『ハートストーン』が7月15日より東京・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開。

 

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・近年日本でも『馬々と人間たち』、『好きにならずにいられない』、『ひつじ村の兄弟』と良質な話題作が続くアイスランド映画。今夏はカントリーサイドに住む少年たちのアイスランドという土地だからこそより際立つ濃密な青春を描いた『ハートストーン』が公開になります。先日、試写会でいち早く視聴させて頂いたので内容ネタバレにならないよう配慮しつつ、映画の舞台になる東アイスランドやカントリーサイド、それから少年達の同性愛がメインテーマなので、シバノ自身が10年間の取材の中でふれた同国のLGBT事情を写真を交えつつレポートさせて頂きます。映画をこれから観る方、それから観た方が現地の状況を知る事で、より映画の世界が深まれば幸いです♪

 

 

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★7/23(日)映画『ハートストーン』×北欧音楽ナイト『Cold Fever』開催!

ここで急遽なお知らせが。『ハートストーン』公開を記念して、映画の内容がLGBT要素がメインテーマという事で新宿2丁目のALAMAS CAFEにて映画とのコラボイベント開催します。当日は、アイスランド中心に北欧音楽をDJsがプレイ、シバノは店内にあるモニターでアイスランド写真のムービースライドを上映。真夏の夜のオープンカフェでアイスランドを感じながら涼をとるもよし、月末・8月のFUJI ROCKやシガー・ロス公演の前哨戦するのもよし、当日は映画に関連した企画もあるので、アイスランドズキ・ハートストーンに興味ある方、エントランスフリーイベントなので、ぜひお気軽にお立ち寄りください!18時〜21時で開催します♪

 

イベント情報の詳細はこちらをクリック♪

 

 

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◆アイスランドにおける首都レイキャヴィクの位置づけ

映画『ハートストーン』には同国の首都レイキャヴィクは画面としては登場しませんが、1つのキーワードとしては重要な意味を持って語られます。約33万人が全土に住むと言われる小国アイスランドですが、そのうちの21万人(約3分の2)が首都圏に住んでおり、第二の都市と言われる北の街アークレイリは約1万7千人。こうして見ると国民の大多数がレイキャヴィクに集中して住んでいる国です。日本から渡航すると、首都はヨーロッパの小さな街という印象ですが、一度カントリーサイドを観てから戻ると、とても人が多い都会に感じるから不思議。首都に戻ると「久しぶりに信号を見た!」と毎度思ってしまいます。そのくらい首都とそれ以外の密度に違いがあるのを念頭に置いて映画を観ると、何気なく出てくる「レイキャヴィクに移ったらしいよ」というセリフの意味もより際立つかと。(写真:↑レイキャヴィクのダウンタウン、一番賑やかな繁華街。このエリアにショップやホテル等が集中している)

 

 

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◆首都から遠く離れた東アイスランド

映画『ハートストーン』の舞台になる町は劇中では明確に語られませんが、西にある首都から遠く離れた東アイスランドエリアの小さな漁村が舞台になっています。首都レイキャヴィクから東アイスランドの拠点になる町Egilsstaðir(エイイルススタジル)までは、全土を一周するリングロード(一号線)で約700km(東京〜大阪間より遠いですね)。アイスランドには鉄道が走っていない為、車か飛行機での移動になります。実際に車で走ると実感するのですが、近年、観光客が激増していると言われる同国でも東アイスランドに入ると極端に人が減る印象(夏場は例外、それでも首都に近い観光地よりは人が少ない)。良く言えばアイスランドのカントリーサイドが本来持っている「自然が主役」という雰囲気を圧倒的に感じられる場所が多い。地図で見るとわかるのですが、一号線から枝分かれして海沿いの町(集落)に出る道も多く、映画の主人公達はそんな隔絶された場所で青春を送っています。(写真:東アイスランドの湾内で撮影。元来、漁業国で、海沿いのエリアは漁業を営む人が多い。)

 

 

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◆リングロードの中でも唯一、舗装されてないエリアがある

鉄道の無い同国で、車はとても重要な移動手段。特に地元の人も観光客も走る事になるのが全土を巡るリングロード(一号線)。この道だけは基本的に舗装されていて、冬季の雪深くなる時期以外は走りやすく安全なのですが、唯一、東アイスランドのエイイルススタジルから南東の町ホフンの間の一区間はオフロード。この状況からも、エリアの人口密度や同国における東アイスランドの観光という視点からの位置づけも感じられます。(写真:左端が東アイスランドエリアの一号線、砂利道だが一号線以外の道はさらに路面状態が悪い所が多いので、地元の感覚で言うと整備されているほうかも)

 

 

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◆カントリーサイドの青春

ここから、少し別なエリアの写真を。首都レイキャヴィク以外はどのエリアにも「大都市」と呼べる場所は無く、主要な拠点でも5千人〜1万7千人の街が中心のアイスランド。それ以外の自然エリアにも村はあるけれど、実際に訪れてみると村というよりは『集落』という印象で、羊の牧畜や漁業を営む親戚一同で住んでるような場所が点在している。↑写真は、日本でも近年ブレイクしてFUJI ROCK等への来日も続くミュージシャン・アウスゲイルの出身地ロイガルバッキ。北部にある静かな集落で、人口は50人程度。村にあるダイナー風の店に入ったが、店内には誰もおらず、結局何も買えなかったくらいスローペース?な場所。仕方なく店を出ると、住民の若者二人が歩いてきた。彼らがどんな青春を送ってるんだろうと写真を撮りながら思ったけれど、映画『ハートストーン』を観るとその一端をかいま観れた気がしました。

 

 

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◆北西部フィヨルドエリアの集落スーザヴィーク

写真↑はアイスランドの中でも特に過疎地と言われる北西部にあるウェストフョルヅルと呼ばれるエリア。多くのフィヨルドが続く景観が特徴。その中にあるスーザヴィークもとても人口の少ない小さな集落。対岸に見える山のふもとに集落がある。撮影した日はこのあたりで3時間程撮っていたが、車は一台も通らなかった。

 

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先程の写真をクローズアップすると、こんな様子。山のふもとに見えるのがスーザヴィーク。集落の中にあるダイナーは一件のみで、そこを訪れた時に店内で会った少女達も映画『ハートストーン』の1シーンが重なりました。集まる場所が無いから自然と年代・男女問わず顔を合わせる事になる。

 

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ちなみにスーザヴィークは写真↑のミュージシャン・Mugison(ムギソン)の出身地。アイスランドの国民的なミュージシャンで、同国の映画音楽などを手掛ける事もしばしば。映画『ハートストーン』でも地元の不良たちが登場するファーストシーンで流れるBGMはムギソンの曲。荒々しい大自然を体現するようなアーティストで、アイスランド魂を感じます。若い頃は漁船に乗ってたそうですが、実際スーザヴィークは牧畜と漁業しか仕事が無いので若者も手伝う事になるんでしょうね(そのあたりも、映画の世界に通ずるものがあるかと)

 

 

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◆自由の象徴としての首都レイキャヴィク

首都レイキャヴィク、それから東アイスランドや地方に点在する集落の写真などご覧頂きましたが、今回映画『ハートストーン』を観て感じたのは「レイキャヴィクへ行く」というキーワードが、不便で隔絶された地方の生活から解放されるという事はもちろん、より精神的な解放もふくめて象徴的に語られてるように感じました。少年たちだけの小さく、平和な世界からの離脱。そして、実際に首都レイキャヴィクはアイスランド人にとっては特別な大都市。50人程度の集落で育ったミュージシャンのアウスゲイルが、レイキャヴィクに移った事で、今は世界的に活躍するアーティストとして飛び出した事もそれを物語ってるかもしれませんね。

 

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劇中とある人物が、ある選択をとります。めまぐるしく情報や物が行きかう日本では、子供達の視点に合わせて考えてみてもその選択にピンと来ない方もいるかもしれません。ただ、アイスランドの中でカントリーサイドの集落の位置づけを実際に目の当たりにすると、日本から想像する以上に地方は隔絶された環境。その中で育つ子供達の世界は想像する以上に小さく、そして濃密。その中で「他人とは違うかもしれない」という不安を抱いた時に、その不安と向き合うには少々残酷なまでにアイスランドの地方は「何も無い」のです。大人ならそういう時は「レイキャヴィックに出る」と一人、都会に出てしまう事も出来るかもしれない。行動の自由が制限される子供達にとっては、否応なしに自分と向き合う事を突きつけられる。首都と、それ以外の地方の落差を写真で少しご覧頂きましたが、そのあたりをポイントにして観ると映画中で描かれてる世界や、登場人物の心情がより入りこみやすくなると思います。※実際には、インターネット網は発達しているので情報という意味での孤独感は映画で描かれてるよりは少ないかも。ただ、人がいない、コミュニティが限られてるという点は劇中に描かれてる以上に過疎な場所も多い。

 

 

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◆首都レイキャヴィクのLGBTシーン(?)事情

さて、映画『ハートストーン』では隔絶された地方を舞台に少年たちの同性への恋が描かれますが、実際に多くの国民が暮らす首都レイキャヴィクのLGBT事情はどうでしょうか?アイスランドでは同性婚のような制度が認められてる事、夏に行われるゲイパレードがある種、国民的なお祭りだったり、女性の首相がレズビアンである事を公表したり同性婚したりで、日本に伝わってくる数少ないニュースとしてはLGBTにとても理解がある国でポジティブな印象のものが中心かと思います。では、現地に暮らすゲイの人たちや、その環境は実際にはどうでしょうか?今回は日本に入ってくる機会の少ない現地事情、写真を交えてご紹介します。(写真:右の入口は首都のダウンタウンにあるゲイバー(クラブ)、名前を変えつつ唯一長年同じ場所で営業しているが、実際にはミックスバーでストレートの人や観光客も多く、レインボーフラッグのかかったゲイフレンドリーな店。という印象)

 

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ミュージシャンやアーティストにもゲイをオープンにして活動している人は珍しく無いので彼らから話を聞くと、切実な問題としては「出会いがとても少ない」事が一番に言えるかと。同国におけるLGBT人口がどのくらいかわかりませんが、国民数が約33万人、そのうち男性・女性に分けて、さらに首都(21万)に住んでる人の中から両想いになれるようなタイプの人と出会う率で考えたら、相当少ないはず。ストレートの人でも異性なら誰でもOKという人で無ければ、その出会いの難しさはなんとなく想像つくのではないでしょうか。(写真:唯一営業が続いてるゲイバー?のドアマン君。とはいえ、誰にでもオープンに営業している店舗なので、彼がイコールでゲイというわけでも無いです)

 

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日本、特に東京は世界でも有数のゲイバー(レズバー)が密集している稀有な都市なので環境が違い過ぎて比較が難しいのですが、レイキャヴィクは東京と比べ、出会いの場として本来期待したいゲイバー(純粋にゲイやレズビアンの人が、出会い的なものを求めつつ集まれるような店)が10年取材した限りではなかなか継続した営業が難しい様子。現地の友人に聞くと、毎年一件くらいはそれっぽい店があるのですが、翌年訪れるとだいたい閉店してるんですね。(写真:ダウンタウンのメイン通りの一本海側にある道沿い。左端の扉がゲイバーへの入口)

 

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この写真は、とある年に訪れたゲイバー(1つ上の写真の店内)。想像以上に広すぎて、カウンターだけのバーがメインの東京とは全く違う環境に少し面くらう。この日は平日だったのでお客さんはほぼいなかったけれど、週末ともなると多くの人で賑わっていた。

 

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先程のゲイバー、広いスペースのさらに奥にはビリヤード台が並んでる部屋もあり、店舗としてはかなり大きい印象。「え?これがゲイバー?」と友人に聞くと、廊下の先にある4〜5畳くらいの小さなスペースへ案内してくれた。そこはメンオンリーで、立ち飲み形式のバーになっており、東京で想像するようなゲイバーらしい雰囲気。色んなタイプの楽しみ方が出来る店舗だったので、続くのかな?と思ったらここも翌年には閉店してました。

 

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それから、ここはまた別な店舗なんですが、ダウンタウンのメインストリートにオープンしてた店。ここは東京にあるようなゲイクラブに近い作りで、DJブースが常設され、イベント中心に盛り上がりそうな店舗でした(右に見える檻もそれっぽいですね)。ただ、ここも翌年訪れた時には閉店。現地LGBTの皆さんの絶対数がやはり少ないので、常時ゲイバーやゲイクラブを続けていく事の難しさを感じます。ちゃんと営業していくためには、どなたでも来店可能なミックスバーにせざるえないんでしょうね。ダウンタウンは賃料もべらぼうに高いし、少人数相手のバーも難しそうだしな〜。首都で8月にあるゲイパレードは国内外から大勢の人が集まり、万単位の人出で相当盛り上がるようですが、老いも若きもセクシャリティもあまり関係なく祭りとして楽しむので、東京で近年メディアも巻き込んで盛り上がりつつあるゲイパレードとは事情が少々違うようです。

 

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今回のブログで書いてる現地LGBT事情は、主にミュージシャンでゲイオープンにしている友人達からの情報やエピソードを元にしてます。写真は、秋の音楽フェスIceland Airwavesへの出演、ヨーロッパのフェスでもプレイするミュージシャン"Bistro Boy"ことFrosti。彼は『BEARS OF ICELAND』というサークルも運営しており、欧米の熊系(熊っぽい見た目のゲイ)を募って、現地のゲイとの交流や観光ツアー&イベントの企画なども行ってる。出会い、という意味では海外の人との出会いも大事な様子。

 

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それから現地のゲイバー情報をいつも教えてくれるバンド"Reykjavik!"のメンバーGummi。京都で開かれたイベントでの演奏で来日経験もあり。近年はバンドメンバーの拠点が変った事もあり、秋の音楽フェスIceland Airwavesへの出演は少ないですが、他のミュージシャン同様、別なバンドのバックで演奏したりは引き続きあり。彼は観光業という仕事柄、現地事情にも詳しいので役に立つ情報を色々と教えて頂いてます。

 

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ご紹介した彼らを含め、多くのアイスランド人がfacebookでセクシャリティもオープンにしながら写真に家族や友人もタグづけしまくっているので、大多数の人がマイノリティに理解があるようにも見えるのですが、実際には高齢な方や、地方の方(映画ハートストーンの世界ですね)にはLGBTに不寛容な方もいらして、「親や親せきに余計な気苦労や悲しい想いをさせたくないから」という理由でクローゼットにしている人もいらっしゃいます。なので、首都レイキャヴィクでもオープンにしている人や、明らかに言動やライフスタイルでわかる人以外は、あまり土足でプライベートに入りこむような質問は避けたほうが良いかもですね。

 

 

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◆同国の自然に興味がある方にもオススメ!

さて7/15〜公開の映画『ハートストーン』に合わせ、あまり写真展やSNSでも触れる機会の少ない首都レイキャヴィクのLGBT事情を交えつつ、映画の舞台になっているカントリーサイドの写真もご紹介しながら、独自の視点でレポートさせて頂きました。映画は、映像で観る機会の少ない東アイスランドの美しい自然も堪能出来ますし、同国の自然に興味のある方にもぜひオススメしたい一作。

 

物語の内容としては少年たちの失楽園を、夜や明け方のシーンなど暗めな画面での人物や自然がとても美しく描写されていて個人的に印象に残りました。少し古いスウェーデン映画ですがラッセ・ハルストレム監督の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が好きな方にもぜひオススメしたい。LGBTの問題に限らず、幼年期、10代の頃に何かしら他人との違いや孤独感で悩んだ事がある人なら、きっと共感できる部分があるかと。真夏の東京、はるか極北のアイスランド映画を観てぜひ涼をとってください♪

 

 

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映画『ハートストーン』情報

2016/アイスランド、デンマーク/129分

原題:Hjartasteinn

監督:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン

出演:バルドル・エイナルソン、 ブラーイル・ヒンリクソン、 ニーナ・ドッグ・フィリップスドッティル

※7月15日(土)よりYEBISU GARDEN CIEMA他、全国順次ロードショー

 

 

・『ハートストーン』公式サイト

http://www.magichour.co.jp/heartstone/

 

・映画『ハートストーン』Twiter

https://twitter.com/heartstonejapan

 

 

 

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